2024年9月15日、風速151km/h（14級）の台風ベビンカが中国の上海市に上陸しました。これは1949年の台風「グロリア」以来、上海を襲った最も強力な台風であり、市内外に大きな影響を及ぼしました。
台風ベビンカの猛威
ベビンカは、過去75年間で上海に上陸した最も強力な台風として記録されました。台風の影響で市内には強風と大雨がもたらされ、多くの樹木が倒れ、街灯柱が倒壊しました。上海の2つの主要空港では、9月15日の夜から数百便のフライトがキャンセルされ、鉄道駅では一部の列車サービスが中止されました。さらに、上海ディズニーリゾート、金江遊園地、上海野生動物園などのリゾート施設も一時的に閉鎖され、多くのフェリーも運航を停止しました。
このような混乱は、3日間の中秋節の休暇中に発生しました。上海は通常、強力な台風の直接的な影響を受けにくく、南中国に上陸することが多いです。しかし、今回の台風ベビンカは、中国の海南省に上陸し、人命と財産に大きな被害をもたらしたスーパー台風「ヤギ」の直後に発生しました。
中国政府の迅速な対応
台風ベビンカの影響を最小限に抑えるため、中国政府は迅速かつ大規模な対策を講じました。9月15日の午後5時までに37.7万人以上の住民が避難し、811隻の船舶が安全な場所に避難しました。浙江省では、すべての沿岸港湾活動が中止され、沿岸旅客船の運航が停止され、水関連の建設プロジェクトも一時停止されました。浙江省海事局は、台風ベビンカに対する緊急対応レベルを2級に引き上げ、浙江省気象局の最新の台風予報によると、台風ベビンカは9月16日の朝に浙江省平湖と上海の間に上陸する可能性があるとされました。
台風予報と進路
アメリカ海軍の合同台風警報センター（JTWC）は、台風ベビンカ（フィリピン名：フェルディ、日本名：台風13号）が上海の東南東306kmに位置していると報告しました。ベビンカは過去6時間で時速22kmで西に移動しました。JTWCの予報では、ベビンカは北に位置する亜熱帯低気圧帯の影響で西北西に移動するとされています。予報によると、ベビンカは12時間以内に陸地に上陸し、強い台風として上陸する可能性があります。その後12時間以内に内陸に進み、急速に熱帯低気圧に弱まる見込みです。ベビンカは、1949年以来、上海の主要な金融センターを襲った最強の熱帯暴風雨になる可能性があります。上海に上陸した最強の台風は、1949年の台風「グロリア」で、風速は144km/hでした。
影響と予防措置
2024年の台風シーズンの最新の影響により、上海当局は市民を避難させ、数百便のフライトや屋外イベントをキャンセルし、地下鉄の運行を停止しました。市政府は市民に集まらないよう呼びかけ、家屋を補強し、船舶を港に避難させるよう求めました。中国気象局は9月15日の18時に台風警報をオレンジから赤に引き上げました。上海の崇明区は、9月14日に9,318人の避難命令を出し、翌日には作業が完了しました。
9月15日の20時以降、上海の2つの空港での出発便および到着便はすべてキャンセルされました。6つの地下鉄路線と9つの地下鉄路線の高架部分が9月16日から運行を停止します。長江デルタを通る一部の鉄道路線も運行を停止しました。約2,500万人が住む上海市は、排水システムを点検し、200人の緊急対応チームを展開し、洪水対策のインフラを巡回し、大雨と洪水のリスクに備えて川の水位を2.4メートルまで下げる対策を講じました。江蘇省と浙江省の周辺都市も台風ベビンカの影響に備えています。浙江省では、工業団地から9,000人以上の労働者が避難しました。
9月15日8時から9月16日8時まで、江蘇省南部、浙江省北部、上海では大雨から豪雨が予想され、一部地域では100～120mmの激しい雨が降る見込みです。沿岸地域、上海、江蘇省南東部、杭州湾、揚子江河口、舟山諸島では風速13級（秒速37.0～41.4m/s）の強風が予想されます。台風ベビンカの中心付近では、風速12～14級が予想されます。
台風の影響とその後の対応
台風の進路に住む住民40万人以上が避難し、市内では暴風により1万本以上の木が倒れました。さらに、5万6,000人以上の救助隊員が動員され、負傷者は1人報告されています。9月15日の夜以降、上海の2か所の空港で1,400便超が欠航し、570本以上の列車の運行が停止されました。中秋節の連休中であったため、人々の移動にも大きな影響が出ました。
上海市政府は、市民の安全を第一に考え、迅速な対応を続けています。避難所の設置や食料、水、医薬品の確保など、避難者への支援が行われています。また、倒木や倒壊した建物の復旧作業も進められており、市民生活の早期回復を目指しています。
さらに、台風後の感染症対策も重要です。大雨や洪水により衛生環境が悪化する可能性があるため、消毒作業や医療支援が強化されています。市民には、衛生管理を徹底し、必要な予防接種を受けるよう呼びかけられています。
今後の課題と対策
今回の台風ベビンカの被害を受けて、上海市および周辺地域では、今後の防災対策の強化が求められます。特に、都市のインフラ整備や避難計画の見直しが急務です。気候変動の影響で自然災害の発生頻度が増加しているため、長期的な視点での対策が必要です。
具体的には、以下のような対策が考えられます：
- 排水システムの強化： 洪水対策として、排水システムの整備や河川の浚渫が重要です。都市部の排水能力を向上させることで、大雨による浸水被害を軽減できます。
- 避難計画の見直し： 大規模な避難が必要な場合に備えて、避難所の確保や避難経路の整備が求められます。また、避難情報の迅速な伝達方法も再検討する必要があります。
- 建物の耐風対策： 強風による建物の倒壊を防ぐため、建築基準の見直しや既存建物の耐風補強が必要です。特に、公共施設や避難所となる建物の耐久性を高めることが重要です。
- 防災教育の強化： 市民への防災教育を強化し、災害発生時の適切な行動を身につけてもらうことが重要です。学校やコミュニティでの防災訓練を定期的に行い、意識を高めることが求められます。
- 気象情報の精度向上： 高精度な気象予報システムを導入し、早期警戒システムを強化することが重要です。これにより、迅速な避難指示や防災対策が可能となります。
結び
台風ベビンカは、上海に大きな被害をもたらしましたが、政府および市民の迅速な対応により、多くの人命が守られました。今後も、自然災害に対する備えを万全にし、被害を最小限に抑える努力が続けられることが期待されます。中国全体として、気候変動による自然災害のリスクが高まる中、持続可能な防災対策を推進していくことが重要です。
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